2020年4月28日、わずか1000分の1秒という一瞬の間に、強力な電波バーストが地球に押し寄せた。天文学者たちは、電波望遠鏡がとらえたこの奇妙な信号をたどり、発生源となる天体を突き止めた。宇宙の謎の一つが、ついに解き明かされるかもしれない。
11月4日付けで学術誌「ネイチャー」に掲載された3編の論文によると、この信号の正体が「高速電波バースト」であることが国際研究チームによって特定された。高速電波バーストは、持続時間が数ミリ秒以内の非常に激しい電波フラッシュである。同じようなバーストは以前から検出されているが、いずれも銀河系外からのものだった。研究者たちは長年、高速電波バーストが発生するしくみに関心を寄せており、恒星の爆発という説から宇宙人の仕業とする説まで、さまざまな憶測が飛び交っていた。
そして今、高速電波バーストの発生源の少なくとも一つが、「マグネター」と呼ばれる恒星に似た奇妙な天体である可能性が高いことがわかった。マグネターは大きな恒星が爆発したあとに残る若い中性子星の一種で、非常に強力な磁場をもつ。
今回の論文の一つを執筆した米カリフォルニア工科大学の大学院生クリストファー・ボチェネク氏は11月2日の記者会見で、「初めてデータを見たとき、興奮のあまり固まってしまいました」と語った。
今回の信号は、発生源となる天体が特定された最初の高速電波バーストとなった。「この発見により、ついに高速電波バーストの起源に迫れるようになりました」と、南アフリカ、ケープタウン大学の天体物理学者アマンダ・ウェルトマン氏は言う。なお、同氏は今回の研究に関与していない。
暗闇の中のバーストを探す
高速電波バーストという現象は2007年に発見された。一瞬の出来事のため研究が難しく、当初は、電子レンジなどの地球上の発生源からの信号を誤認しているのではないかと疑う科学者さえいた。
2013年までにさらに4つのバーストが発見されたことで、これが宇宙から来ていることは確実になったが、謎は深まる一方だった。その3年後、天文学者たちは、高速電波バーストを繰り返し発生している天体を発見し、それが地球から26億光年以上離れた銀河にあることを特定できたと発表した。天文学者たちは現在までに、100個以上の高速電波バーストを発見しており、そのうちの約20個が繰り返しバーストを発する「反復型」である。(参考記事:「深宇宙から謎の「反復」電波バースト、過去2例目」)
バーストの持続時間は非常に短く、発生源はあまりにも遠方にあるため、天体物理学者たちは、この強烈な電波バーストの発生源の特定に苦労してきた。しかし4月27日、まず米NASAの2基の宇宙望遠鏡が、天の川にあるSGR 1935+2154というマグネターから発せられるX線とガンマ線を検出。翌日、地上の電波望遠鏡が同じ天体からの電波信号を検知した。
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